6年ぶりの南インドで見えてきた子どもたちの今

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インド、タミル・ナドゥ州から物売りの子どもが消えた!

いつもインドを訪れると、荷物を持つからとか、お菓子を買わないかと群がって来る子どもたちの姿が、今回は消えていました。そして街角で物乞いをする子どもたちの姿も消えたのです。あれ?どうしたんだろう?と思っていたら施設の先生たちの話を聞いて合点が行きました。1990年頃からあったチャイルドラインという児童保護の通報システム1098が、最近内務省の管轄下で強化され、病気の子ども、学校に行かずに町をうろついている子ども、物売りをしている子ども、親に虐待されている子どもなどを見かけた人や、保護を求める子ども自身がこの無料電話で24時間いつでも助けを求めることができるようになりました。電話を受けたカウンセラーが親身に話を聞き、すぐに対応してくれるとのこと。アンナイ子どもの家でもセントジョセフ子どもの家でも、そうした通報システムによって恐ろしい環境から保護された子どもたちが半数ほどを占めています。中でも町から町へと路上で放浪生活を送る家族やアルコール中毒や精神病を病んでいる親たちから保護される子どもが多く、幼児婚や性的、精神的虐待を受け心に大きな傷を負っている子どももいるのが現実です。

子どもたちに何が必要か
助けてくれる家族を持たない子どもたちは、一人で生きていくスキルや資格を身につけなくてはならないのです。「将来の希望を持ち、どうしても希望の職業に就きたい!」という強い意欲を育てることがとても大切だと施設責任者は言います。そして規則正しい生活と家庭崩壊で心に受けた傷をいやす心のケアによって子どもたちを支えることで、彼女たちは目的を叶えるために勉強に集中できるのだそうです。

子どもたちを明るく育てるホームでの暮らし
アンナイ子どもの家には16人のスタッフが2年生から10年生までの46人の女の子たちのケアにあたっています。5時半起床から9時就寝までの規則正しい生活。勉強、健康、食事、服、身の回りの世話、体の健康のためのヨガ、裁縫を教える多くの先生の多くの手で愛情をもって育てられています。

子どもの家で守られる生活とは裏腹に…
セントジョセフ子どもの家には32人の2年生から12年生の女子が生活していますがそのうち10人がチャイルドラインや児童福祉委員会によって保護された、家を持たず路上でビーズのアクセサリーなどを売って放浪生活をしている、通称ジプシーと呼ばれる人々の子どもたちです。ちょうど私たちの滞在中に、こんな場面に遭遇し、子どもたちのために保護が必要であることを実感しました。若い男女が小さな息子を連れ、父親は明らかに酔っ払っている様子で2年生の娘、ディビナちゃんを授業中にもかかわらず連れ出しました。母親は大きな声で先生と争っていました。あとで聞いたところ、娘を通学させると政府から支給される1000ルピーを倍額にしてもらえるよう、学校から役所に頼んでくれとの無心でした。先生に断られて怒りの収まらない母親は、子どもの洗濯を手伝うならとしばらく娘と過ごすことを許され、娘の手を引いて洗濯場に向かいました。ディビナは親を恋しがり久しぶりに会えて嬉しそうでしたが、彼らの目的は子どもを利用したお金の無心でした。子どもたちにとって、このように安全に守られて暮らすことができる施設の存在意義は大きいと感じました。

子どもたちの真剣な授業態度に感銘!
タミルナドゥ州政府が近年教育に力を入れている様子がわかったのは非常に嬉しいことでした。8年生までの公立学校の教師の給与が政府から支給されることで授業料が無償化されました。また、私立学校でも半数の教師の給与は政府が支払ってくれるようになりました。
授業を見学して驚いたのは誰一人として退屈そうにしたり居眠りしたりしている生徒がいないことでした。授業内容はかなり高度にもかかわらず、難しい物理の公式もみんな予習が行き届き、すらすらと答えていく姿に心を打たれました。、生徒の授業態度も非常に真剣で、予習もこの学校では当たり前のことなのでしょうか。驚きでした。

その大きな理由は、社会の発展に取り残された片隅の社会にいる生徒たちにとって12年生卒業の成績がAまたはA+でないと希望の職業に就いたり、大学や専門学校に奨学金で進む道が途絶えるからだと聞かされました。小さいころから施設でも朝、夕、晩と3回自習と補習授業が行われ、みんな真剣に勉強しているのです。貧困、カースト差別、孤児、片親などの困難なバックグラウンドを抱えたこの子どもたちは逆に非常に強いのです。どうにか今の最低の状態から抜け出したい、将来成功して自分のような悲惨な状況にいるほかの子どもを助けたいとまで思うほど、逆境から脱出したいという思いは強く、それが原動力となって必死に学んでいるのです。
校長先生に聞いたところ、卒業試験ではAやA+の目標を生徒の95%が毎年達成しているそうでさらにびっくり。卒業後は優秀な生徒は大学に進学して、弁護士、医者、役人を目指しますが、大半は専門学校に進み、男子は、大工、配線、自動車修理工、塗装、建築業、左官、警察官を目指し、女子は、看護婦、教師、警察官、縫製、刺繍やビーズ職人、デザイナーなど高収入が期待できる職業を目指します。中には勉強が苦手な子どももいます。そういった子どもたちはヨガ、ダンス、音楽などの指導者の資格を取ることで、将来の自立への希望を持つように導いています。そして危険がいっぱいな路上生活から救われ、安心した生活環境が保証される施設で育つことで彼らの世界が大きく広がり、夢や希望を持つことができるようになることが彼らの大きな幸せと言えるでしょう。(事務局長 辻)

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