ジョナキ小学校責任者 ワフィル・カーン
私たちはジョナキを「ドリーム・プロジェクト」と呼んでいます。それはジョナキ小学校を通じて、経済的援助がなく、近くに学校もなく、子どもたちを学校に通わせることすら考えられなかったような、人里離れた村の恵まれない家庭に生まれた、才能のある子どもたちの夢を叶える手助けができるからです。20年前、私たちは純粋な気持ちで、子どもたちが基礎教育を受けられるジョナキ小学校という場所を作りました。そして、私たちが情熱と忍耐をもって育てたたくさんの樹木が、最も甘い果実を実らせ、人々に与えるような場所に立つことができるようになるとは、当時はまだ知る由もありませんでした。ジョナキ小学校の卒業生で大学に進学した2名をご紹介します。
シャムスン・ナハールの場合
ジョナキ小学校4回生のシャムスン・ナハールは、2度目の挑戦でついに国立医科大学に入学を果たしました。卒業生の国立大学合格者はこれで2人目となりました。この学校が目指す「どんなに貧しい環境で生まれ育ったとしても、教育の光をともし、質の良い教育を丁寧に与えれば、誰とでも肩を並べて社会に貢献する人になれる」というこれまでの努力が実ったことを実感する快挙でした。
彼女は、雨季になると屋根から水が漏れ、父親が修理する質素なトタンで屋根を作った小さな家で育ちました。ジョナキ小学校にいた頃から聡明な生徒で、教師たちは、子どもたちが既成概念にとらわれず自由に発想できるよう、十分な機会を提供し創造的な授業を行ってきました。生徒一人ひとりがみな厳しい環境にいながらも、彼女のように医者になる夢を見ることができるように教育を続けた、教師たちの努力が実った事例といえるでしょう。
シャムスンは現在、故郷から遠く離れたランガマティ医科大学で学んでいます。バングラデシュには37の公立、68の医科大学があり合計で11,420人の医学生がいます。私立の医学部では毎年度150万円以上の学費がかかりますが、公立は基本的には学費が免除されます。村を出て新しい町の大学に通うことは、バングラデシュの女の子にとってもは大きな挑戦ですが、シャムスンは医師として村に戻り、ジョナキ小学校とその周辺に奉仕するという夢の実現のために、すべてを受け入れ、困難に立ち向かっています。
一人ひとりの持って生まれた「素質」という種に平等に「教育」という水を注いで育てれば、必ず芽を出し、葉を開き、充分で豊かな栄養を吸収して、やがてはそれぞれが違った花を咲かせます。シャムソンをお手本として、多くの子どもたちが、きらきらとした目で未来への希望を持ち続けてほしいと願っています。
ヤスミン・アクターの場合
もう一人は、名門チッタゴン大学の経済学部を卒業しようとしているヤスミン・アクターです。
彼女は志が高く、大変優秀な学生です。ヤスミンは非常に貧しい家庭の出身で、彼女の家族は誰一人これまで中学校にすら行ったことがありませんでした。ヤスミンはジョナキ小学校で学ぶ機会を得たことがきっかけで、今の彼女があります。ヤスミンは学部を卒業した後、大学院に進み、女性の地位向上に貢献するため
に、より高い官職に就けるよう、学業に邁進する決意です。その後は、政府関係の仕事に就き経験を積みたいと考えています。